残念ながら会社員のあなただってMC(マインドコントロール)されている! 本当の統一教会問題は、統一教会だけの問題ではない【仲正昌樹】
統一教会問題を、自分たちと関係のない話に矮小化しようとする人たち
◾️信者を本当に動機付けているものとは?
反統一の宣伝で、「地獄に落ちる」が強調されるのは、その方が悪徳商法だというイメージに合致しやすいからだろう。脅すだけで、言いなりになる信者などいない。信者を動機付けるのは、むしろ、「誰が一番父母様(神の代理としての文夫妻)を喜ばせるか」の競争だ。
みんなが汗と涙を流して必死に取り組む“善の競争”に参加しないと、自分の居場所がなくなるような気がして、いたたまれなくなる。何かしないといけない、という気になって、無理をする。計画的にやっているのではなかろうが、教会ごとにそういう雰囲気が演出されるーー責任者に指導力がなければ、そういう雰囲気にならず、布教や万物復帰の実績はあがらない。そういう雰囲気が作られることをMCと呼んでもいいが、反統一が思っているほど、シンプルに操られるわけではない。
こうした、涙の誓いで、父母と中心(責任者)の思いに応えようとする“善の競争”は統一教会の専売特許だろうか。私はここ十年くらい、勤め先の大学の学類会議(教授会)や類似の会議に出ていると、統一教会の信者だった頃のことを思い出す。会議のメイン・イベントとして大学の現状が語られる。国立大学は国の方針で運営交付金がどんどん削られ、誇張抜きに存続の危機に陥っており、学長が危機意識を持っておられて、各学類に何ができるのか具体的に示すよう指示された、と告げられる。
それに続けて更に、大学に残されたわずかな資源は、外部から資金を獲得できる競争力のある部局に集中的に投資せざるを得ず、その面で貢献できない文系の学類はその分、従来より厳しい予算・人員の削減、教授・准教授への昇進の条件の厳格化を受け入れざるを得ない…。ほぼ予想通りの内容だが、学部長などの責任者が深刻そうな口調で語ると、ダメ押しされているようで、気が重くなる。そんなの無理だと言いたくなるが、お気持ちは分かりますが、そんなネガティヴなことを言っても、学長や理系出身の理事から
統一教会の伝道や万物復帰の決断式が思い出される。父母様と教会が置かれているとてつもない苦境、信者の生活費さえ満足に支給されない台所事情が語られる。今最も摂理(神と教祖の計画)に貢献し、父母様に覚えられているのは、〇〇教会だが、内の教会の現状は…。みんなが苦しいのは分かるが、ここで否定的なことを言っても…。〇〇が勝利している秘訣は◇◇だから、私たちもそれに倣って…。
教授・准教授への昇進問題に、統一教会で対応しているのは、「祝福」を受ける、及び「家庭」を持てる資格をめぐる問題だろう。「祝福」というのは合同結婚式に参加することだが、これに参加しただけで夫婦になるわけではなく、しばらく間を置いて教会の許可を得たうえで、正式に夫婦になり、その時籍を入れる。「祝福」はどちらかと言うと、婚約だ。「祝福」を受けるにも「家庭」を始めるにも、信仰歴何年とか、成約(一週間)断食をやったか、何人伝道(勧誘)したか、万物復帰をどれくらいの期間やった、といった条件をクリアしたうえで、本部の家庭局からチェックを受ける――今はかなり緩くなったようだが、私のいた頃はかなりきつかった。